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中堅・中小企業経営の未来を担う、これからの採用

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役
小笠原 隆夫

第4回これからの採用・人材確保のために必要なこと

今回はこれまで見てきたことのまとめとして、採用・人材確保からその周辺の人事戦略まで観点を広げ、これからの取り組み課題を提示してみたいと思います。

1. 既成概念から脱却する必要性

採用活動の現場で欲しい人材を尋ねると、「やっぱり新卒が良い」「若手が良い」というところは、今でも多いように思います。新卒の方が組織風土になじみやすく、ミドル・シニア世代はそうはいかないという評価を聞きます。

ただ、最近の統計資料を見ると、年齢別の有効求人倍率は平準化に向かっている様子が見られます。必ずしも若手志向ではなくなってきているということで、これまでの考え方から変わってきていることは間違いありません。

図1 年齢別有効求人倍率の推移

その要因として、私はやはり終身雇用の前提が崩れてきていることが、最も大きいと考えています。

長期雇用が前提であれば、新卒中心で一括採用し、入社年次ごとの人材管理をしながら、育成も賃金体系も長期の貸し借りで行っていくことは理にかなっていますが、その環境は変わってきています。

もしも長期雇用の前提がないとすれば、例えば「新卒の一括採用」は、同時期に未経験者が大勢入社してくることで業績上の重荷になりますし、限られた期間での大量採用は、質の低下やミスマッチ、無理強いや非効率がどうしても出てきます。

少子高齢化の中で、「若手の採用が難しくなる」という危機感を持つ向きがあります。しかし既成概念から離れれば、新卒や若手の採用にこだわる必要はなくなるかもしれませんし、そうなれば一括採用の中での競争も必要がなくなります。

既成概念から脱却し、こうした世の中の変化は、常に感じておく必要があります。

2. 「人を採るには」の観点だけではもう立ち行かない

企業が人材を採用する理由は、端的に言えば「仕事をやる人が足りていない」ということです。そこで最も都合が良いのは、「教えなくても仕事ができる人」でしょうが、そんな人材にはめったに出会いません。

採用においては、そんなお互いの認識ギャップを埋めるプロセスが必要であり、それが難しければ、その人は不採用ということになります。

ギャップの見極めが重要ということで、質を担保するために採用基準を厳しくします。業界経験、実務経験、リーダー経験などで、高いハードルを設けた採用は、人手不足と言われている今でもときどき目にします。

それで思惑通りの採用ができれば良いですが、特に中堅・中小企業では、そこまでの高望みはできません。基準を守れば人が採れず、それを緩めれば「採用したがうまくいかなかった」という結果になることも多いでしょう。

こうした中で考えるべきことの一つに、「今までは埋められなかったギャップを埋めるにはどうするか」があります。「今まで活かせなかった人材を活用する」ことを考える必要があるということです。

その一つは、「指導や育成の強化」で、実際に育成メソッドを見直すことで、採用基準には物足りないと評価される人材を底上げできるようになり、人材不足に対処している企業があります。

もう一つは、「柔軟な働き方の推進」。短時間勤務や在宅勤務、副業解禁などの施策によって、働く機会が持ちづらかった人材を戦力化することです。すでに大手企業では進めているところもありますが、中堅・中小企業でも、工夫次第で対応する余地があるはずです。

また最近は、一度退職した者の出戻りを積極的に認めている会社もあります。一度外の空気を吸った人材は、自社の良さを再認識するところがありますので、一つの方法ではあるでしょう。

さらには、安易な欠員補充はせず、不要な業務の選別、自動化やIT化といったBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)を、常に人事戦略をセットで考えている会社があります。

こうした世の中の動きを見ても、今までのように、ただ「人を採るにはどうするか」という観点だけでは、もう立ち行かなくなっていきます。広い意味での人事戦略も合わせて考えることが必要になってきています。

3. まとめ

ここまでいくつかの取り組み事例を挙げてきましたが、そのまとめとして、基本となる考え方を挙げておきます。

採用活動は企業全体の広報戦略でもあること、これまでの手法にとらわれない様々な工夫をしていくこと、採用手法だけでなく、組織風土改善や業務プロセスの再構築といった視点も持つこと

人材をどう確保していくのかは、中堅・中小企業においてはまさに経営の未来を担う重要なテーマです。採用・人材確保の競争力は、企業全体の総合力であり、企業価値そのものだということができます。

あらためて、今までの取り組みにとらわれない視点が必要になっています。

プロフィール

小笠原隆夫
[所属・役職]
ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役
[略歴]
IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、 数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、 人事マネージャー職に従事する。
2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を 担当。
2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名〜1000名規模程度まで)を中心に、 豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、 人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の 課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。
パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

2012年3月より「ビジネスインテグレーションパートナーズ株式会社」にパートナーコンサルタントとして参画し、 2013年3月より同社取締役。
2016年4月より「BIP株式会社」に社名変更
[URL]
ユニティ・サポート
BIP株式会社
ブログ:会社と社員を円満につなげる人事の話

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