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顧客と共に業務プロセスを変革

IDC Japan株式会社 ITサービスマーケットアナリスト 植村 卓弥氏

国内のビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)市場が堅調に伸びている。 BPOサービスはITを有効活用したアウトソーシングという段階にとどまらず、ユーザー企業の業務プロセス改善に着手し、核となる事業にリソースを集中させることで、高い効果を出すこと狙うもの。今後も高い事業の進化と成長が期待されている国内外のBPOサービスの現状と課題、将来像について、ITサービス市場の調査、分析を専門とする植村卓弥氏に話を聞いた。

カスタマーケアが柱

──現在の国内BPO市場の概要を。


IDC Japan株式会社
ITサービスマーケットアナリスト
植村 卓弥氏
植村:BPOサービスとは、企業が契約によって業務管理、業務機能やその実行を外部組織に委託するサービスです。ITベンダーにとっては新規事業として位置付けられる場合が多いです。受託業務の種類は大別して、業種業態を問わず標準化可能な共通業務機能型BPOと、特有の業務を受託する産業特化型BPOに分けられます。

現在、国内BPOサービスの市場規模は、5846億円(IDC Japan2012年データ)。しかしこれは、共通業務機能型と位置付けている中でも主要4業務「カスタマーケア」「人事」「財務経理」「調達購買」に限定した算出であり、潜在的な市場規模はさらに上回っています。成長率は、リーマン・ショック前に比べるとやや鈍化はしているものの、引き続き伸びており、12年は3.7%、今後17年まで毎年3.9%程度増加すると試算しています。

現状、国内ではカスタマーケアの分野が大きなシェアを占めます。コールセンターサービスが好例です。ITで大量のデータ処理を行う必要があり、かつ比較的業務対応を標準化しやすい業種業態の企業の利用が多くなっています。

──4分野の中で今後の成長分野は。

植村:調達購買や福利厚生(人事)など、現在の市場規模の小さい分野の成長率が高いと予測していますが、カスタマーケアも今後も成長余地は大きいと見ています。特に近年進化を遂げているクラウド、ビッグデータ、ソーシャル、モビリティーといった新たなプラットフォームとの融合が鍵になってきます。サービスの精度を向上させるだけでなく、より戦略的な顧客管理や営業活動への展開が期待できるからです。一例を挙げれば、顧客情報の分析業務をソーシャルメディアと組み合わせて効果的な分析をすること。この結果をセールスアプローチに活用し、クロスセル(関連購買行動)につなげるといった活用ができます。

ITの進化がもたらす影響はほかの3分野にも及び、BPO市場の発展を助けています。例えばSaaS(ネットワークを通じてアプリケーションソフトを提供する仕組み)を活用し、人事や財務経理、調達購買サービスを中堅、中小企業にも広げる動きも出ています。

むろん主力ユーザーの大手企業も、人事でいえば給与計算など標準化できる業務はこうしたシステムを活用し、人材育成など間接部門でも事業育成の核となる業務に資源を集中化させています。特に近年、海外進出を進める企業では、より競争力を高めるために、BPOを利用することで生産性向上を目指す動きが顕著です。

──BPOサービスの提供する側の課題は。

植村:企業内の情報処理を外部事業者に委託する以上、セキュリティーの確保は重要かつ前提となります。さらにITとは異なる専門性もITベンダーに求められてきます。日々業務を円滑にこなしていくきめ細かい品質、標準化しにくい各業種やユーザー企業固有の要素への対応力が必要といえるでしょう。

業務代行という発想から脱し、ユーザー企業とともに業務プロセスを変革し、競争力の高い組織となる素地を構築した上で、業務を価値として提供するという姿勢が重要になってきます。実際にそういったベンダーが増えつつあり、この分野の成長を支えています。

当然、専門人材の育成や専門特化した企業との協業、またM&A(買収・合併)も不可欠になってきます。内部人材の育成を並行して専門ノウハウを蓄積したベンダーが、信頼できるパートナーとして選ばれる傾向は、今後ますます強くなってくるでしょう。

R&D分野の利用も

──国内市場でBPO活用がより大きな価値をもたらす業種業態は何か。

植村:従来、金融機関はデータ処理量が多く、特にコールセンターが活用されてきました。一方、金融特有の業務のBPOは、現状は保険業が中心で、銀行や証券会社への広がりは十分ではありませんでしたが、セキュリティーの強化や業務ノウハウの蓄積が進むにつれ、利用が進む可能性が高いです。IT活用がすでに進んでいる業種なので、大きなシェアを占めることは間違いないと思います。

一方、人事や財務管理は、業種業態より企業規模によるスケールメリットをユーザー、ベンダー双方が出せる分野です。仮に社員数自体が多くなくても、全国に従業員が散らばり、雇用形態、勤務体系が多様な物流、小売りなどが有力だといえます。

将来性の点でいえば、新薬開発を進める製薬会社の治験分野。治験そのものは、ユーザー企業にとっての核となる部分ですが、データ管理すべてを社内に囲い込む必要はなく、実際に専門機関が受託しているケースは多いです。より専門特化した受託企業と組むことでパフォーマンスが上がる例もあるでしょう。

製造業のR&D(研究開発)分野のデータ管理でも同様。知見を共有化し受託側にもノウハウを蓄積することで、今後例えば日本のITベンダーが海外進出を考える際にも応用できると思います。

──将来的にBPOサービスの海外進出は活発化しますか。

植村:グローバル化という点ではまず、外国企業の日本でのビジネス展開に商機があると思います。日本には特有のビジネス慣習があり、外国企業が日本に進出した際に、年末調整をアウトソーシングするような動きはすでにあります。年末調整は日本特有の業種業態で日本のベンダーが強みを持ちます。こうした業務はほかにもあるでしょう。

一方、日本のBPOサービスが海外進出できる可能性は、現時点では限定されています。BPOを利用する大きな目的の一つにコスト削減と生産性向上がある以上、サービスコストが優先される傾向があり、新興国の企業が有利になりがちです。しかし、いつまでも同じ状態が続くわけではないと思います。前述の製薬会社の治験、製造業のR&Dなどは、日本企業に一日の長がある技術分野です。それ以外にも単純に共通化できない産業特化型BPOについては、日本ならではきめ細かい業務サービス品質が求められる領域もあるでしょう。

これらを足がかりに将来的には、グローバルに活躍する受託企業も数多く出てくるのではないでしょうか。

各社紹介

さくら情報システム株式会社

http://www.sakura-is.co.jp/

株式会社アグレックス

http://www.agrex.co.jp/

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