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進化するデータセンター — クラウドを支え企業活動の発展に貢献

電力消費量を減らすための様々な取り組み

データセンター市場が拡大している。
データセンターの運営上の課題になっているのが空調用を中心とした電力消費量の削減だ。
そのために、空調機器の冷却効率向上、IT(情報技術)機器の排熱と冷却用冷気の分離、外気冷却の取り組みが進んでいる。
一層の省エネを実現した新たなタイプのデータセンターについて見ていく。

拡大するデータセンター市場

クラウドサービスの普及やビッグデータの活用などで、巨大なコンピューターリソースを提供するデータセンターの役割はますます重要になっている。その中で、データセンター市場は順調に拡大、IDCジャパンによれば、2015年の国内市場は前年比7.7%増の1兆429億円になる見通しだ。そして、14年から19年は年間平均成長率6.7%、19年の市場規模は1兆3386億円になると予測されている(図)。

データセンターにはサーバーやストレージ、ネットワーク機器などのIT機器が設置され、システムは集中的に管理、運用される。そのため、オンプレミスよりも、電力消費量が少なくて済み、効率的なエネルギー利用が実現する。また専門技術者が運用管理するため、システムは高度なレベルで運用されるとともに、人件費の節約にもつながる。さらに地震などの自然災害や情報漏洩、サイバー攻撃などに備えた強固なセキュリティーも確保されている。加えて、万一災害に遭った場合には被災地外のデータセンターへと運用を引き継ぐディザスターリカバリー(DR)の運用も可能だ。

運営コスト低減が競争優位確保のカギ

こうしたメリットから、企業の利用が進み、今まで社内のサーバールームでシステムを運用していたものをデータセンターの利用へと切り替えるケースも増えている。また、すでにデータセンターを利用していた企業でも、新設のデータセンターで高い省エネ性能や、耐震性能を備えた最新鋭の施設へと移行する企業も増えている。さらに、映像配信やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、ネット通販などネットビジネスの成長もデータセンター市場の拡大を後押ししている。その上で、今後大きな成長が見込まれる背景には、クラウドサービスの急速な拡大がある。従来、クラウドサービスはWebアプリケーションやシステム開発環境用に利用されることが多かった。しかし、最近では業務システムを移行する企業が増え、その勢いが加速していることから、データセンターの需要がさらに高まることは確実だ。

こうした中で、企業は設備の仕様やサービス品質に対して、より高いレベルを求めるようになっている。それに応えるべく、データセンター事業者も新技術の導入による付加価値向上とコスト低減を中心に様々な取り組みを進めている。

最大の削減ポイントは電気料金

データセンターの運営コストは、人件費、地代家賃、電気料金、減価償却費、ネットワーク費から構成されるが、一番手をつけやすいのが電気料金だ。データセンターの電力消費は、一般にIT機器が3割程度、空調関係が5割弱、電源関係が2割強程度といわれている。

特に最近は、サーバーが仮想化されて運用されており、ラックにはサーバーが高密度で載せられている。その結果、サーバーの発熱量は飛躍的に増加し、高性能化するストレージやネットワーク機器などとも併せて、データセンター全体の発熱量は増加の一途をたどっている。そのため、空調機器の電力消費量をいかに抑えるかが極めて重要になる。

次が地代家賃の削減だ。従来、データセンターは東京を中心に首都圏に集中していた。大口ユーザーである大手企業が自社の情報システム部員が緊急時に容易に駆けつけることができる場所にあることを求めていたからだ。この傾向は今後も残るが、クラウドサービスでは立地場所にはこだわることなく、低料金でバランスの取れたサービスを提供できることが重要になる。そのため、最近では比較的地価が低い郊外、あるいは遠隔地に建設されるデータセンターも出てきている。

例えば、北陸地方は大地震発生リスクが東京・大阪・名古屋に比べて極めて低い。加えて、北陸新幹線で東京から2時間で行くことができる。そこに雷対策や最新の省電力対策を施して、建設されたデータセンターを利用すれば、コスト面と事業継続計画(BCP)面で優れたシステム運用が可能になる。

電力料金高騰で運営コストに大きな影響

データセンターの電力消費量の増大は運用コストだけにとどまらず、温暖化対策から見ても大きな問題だ。なかでも、東日本大震災以降の電力料金の高騰によって、震災以前とは比べものにならないくらい、電力消費量が運営コストに影響する大きな要因となっている。

データセンターの電力使用効率を見る指標に、PUE(パワー・ユーセッジ・エフェクティブ)がある。施設全体の消費電力量をサーバーなどIT機器の消費電力量で割ったもので、PUEが小さいほど、空調にかける電力の割合が低く、効率的に管理されていることが分かる。

国内のデータセンターはPUE2.0前後が標準といわれており、IT機器と同等の電力を空調と電源で使っていることになる。そのため、空調用電力消費量と電源ロスを減らしていけば、PUEを小さくすることができ、高効率のデータセンター運営が可能になる。ちなみに、海外の大手検索事業者のデータセンターは、PUE1.1前後と非常に高い電力使用効率を実現している。

空調用電力削減に向けた3つの取り組み

空調用電力の削減に向けた取り組みでは、空調機器の冷却効率向上、IT機器の排熱と冷却用冷気の分離、大電力が必要な空調機を使わずに、外の空気を取り込んで冷却する外気導入が注目される。1つ目の空調機器の冷却効率の向上では、空調をトータルシステムとして自動制御、継続的に改善を行う空調自動制御システムDCIM(データセンター・インフラストラクチャー・マネジメント)が開発されている。DCIMはデータセンター内の熱発生源からの空気の流れをモデル化し、各機器類に設置されたセンサーから温度や湿度などのデータを収集。センサーの計測値の変動に合わせて、空調機を選定、学習機能を用いた自動計測・制御で、最適な空調環境と電力消費量削減を実現する。

2つ目のIT機器の排熱と冷却用冷気の分離も効果が大きい。通常、データセンターではIT機器の発熱による機器の故障を防ぐために、データセンター全体を冷却し、一定の温度や湿度に保っている。しかし、その方法では、高密度でIT機器が置かれたラック全体に冷気が行き渡らないことが多く、扇風機を置いて急場をしのぐケースもある。また冷気と暖気が混じり合って、空調機器の性能を十分に引き出せず、空調コストがかさんでしまう。その状態を解消するために、ラックを2列セットで背中合わせに設置し、内側にIT機器からの熱排気の通路(ホットアイル)をダクトのような形で作り込む。これによって、IT機器が発する熱はデータセンター内に拡散せず、空調機器に高い温度のままで、戻すことができる。そして、空調機器はそれを冷却すればよいので、本来持っている性能を十分に引き出すことができ、導入台数を最小限に抑え、電力消費量を減らすことが可能になる。

クラウドへの移行費用を助成する東京都

3つ目の外気冷却は、寒冷地である東北地方や北海道で取り組みが始まっている。年間を通して気温20度以下が8割を超える青森県六ケ所村では、冷涼な気候を利用し、外気冷房と雪氷冷房の併用で、PUE1.2と高効率の新型データセンターがサービスを開始しようとしている。従来の外気冷却は外の空気をそのまま取り込むので、高湿度の場合などは、除湿が必要となり、そのための除湿機が必要で、そのための電力を使っていた。しかし、熱交換器を通すことで、湿度の影響を受けずに済む。さらに、雪氷の保存場所を敷地内に作り、夏季の冷却に生かす。2500立方メートルの雪氷は夏でも溶けにくいように工夫し、雪氷の山の地中に熱交換用の管を張り巡らし、その冷気をデータセンターの冷房に役立てる。

また、北海道美唄市では市と大学、事業者などの産官学連携で、サーバーの冷却装置の代わりに雪を使うデータセンターの実証実験も始まっている。北海道では冬の間、自治体が多額の予算を組んで、道路の除排雪をする。この雪を集めて雪山を作り、木材チップで覆って、夏まで保存する。それで冷却した不凍液をデータセンター内に巡らせて、冷却する。冬は氷点下になる外気で、冷やすという仕組みだ。

データセンターの電力消費量削減を後押しする動きは自治体でも始まっている。

データセンター総面積の約半分が立地する東京都では2015年5月から日本データセンター協会と協定を締結、「環境配慮型データセンター認定制度」をスタートさせた。データセンターの省エネ推進と環境配慮型データセンターの普及を図ることが目的だ。そして、都内の中小企業が認定データセンターのクラウドサービスへ移行する場合には必要な経費の一部を助成し、利用促進を図る狙いがある。

このようにデータセンターでは電力消費量の大幅な削減に向けた様々な取り組みが進んでいる。これを効果的に利用することで、企業は低価格で質の高いクラウドサービスやコンピューターリソースを自由に使うことが可能になる。それは企業が競争力を強化し、事業を成長させていく上で欠かせない強力な基盤なのである。

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