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進む創造的復興 ~産業の強さ増す 熊本県~

一昨年4月、2度の震度7という大きな地震に見舞われ、甚大な被害を受けた熊本県。しかし今、熊本の産業は目覚ましい回復力を見せる。熊本に立地する企業や人々はどのようにして困難に立ち向かい、乗り越えたのか。サントリーホールディングス代表取締役社長・新浪剛史氏と蒲島郁夫知事が話し合った。

豊富な水資源 良好なアクセス

── サントリー九州熊本工場は、ビールや清涼飲料の生産工場として2003年に操業開始されました。なぜ熊本だったのですか。

新浪 サントリーは「水と生きる」をコーポレートメッセージに掲げており、私たちの製品は水が命です。私たちのこだわりに合う、質の高い水に恵まれた場所が熊本でした。また製造業にはロジスティックスが重要な要素ですが、アクセスの良さもポイントでした。

蒲島 世界中を回っても熊本ほど水が豊かで清らかなところを私は知りません。名水百選に全国最多の8カ所が選ばれるほどの水質に加え、熊本都市圏約100万人の生活用水のほぼ100%を地下水でまかなっています。この豊かな水は、食品産業はもちろん、半導体産業などの産業用水としても多くの企業に利用されています。
また熊本県は九州の中心に位置する交通要衝地でもあり、生産や物流、営業拠点として最適です。本州へのアクセスも良好で、東京とは飛行機で1時間30分、大阪とは1時間、新幹線でも3時間で結ばれています。アジア各都市とも近く、世界を見据えたビジネスも可能です。

── 一昨年の地震では工場にも大きな被害が出たと聞いています。

新浪 地震後すぐに東京で災害対策本部を立ち上げ、私も現地に駆けつけましたが、震源地が近かったこともあり、生産ラインが倒壊し、場内の地盤が大きく陥没するなど想像以上の被害に目を覆いたくなりました。被害額は110億円。九州域内へ出荷するビールや清涼飲料の生産が止まってしまいました。従業員も被災しており、その落胆ぶりから工場の再開を危惧していることが伝わってきました。
しかし熊本工場は、我々の製品を作るにはあの場所しかないと決意し建てた工場です。必ず再開しなければなりません。その場で従業員に「必ず再開しよう。一緒にやろう!」と約束しました。皆の目の色が変わり、一致団結して動き出すことができました。

蒲島 
震災からひと月、被災工場で決意を語る新浪氏
新浪社長の「熊本に残る」という決断には県民も我々もとても勇気をいただきました。熊本地震では、多くの企業が被災しましたが、誘致企業の撤退は1件もありませんでした。また、サントリーをはじめとした各企業の熱意あふれる復旧活動により産業の回復は目覚ましく、復興の原動力となっています。地震発生の2カ月後には、国とともに中小企業を中心に復旧費用の75%を助成する「グループ補助金」制度を立ち上げるなど、スピード感ある支援施策に取り組んでいます。
熊本県では、単に元あった姿に戻すだけでない「創造的復興」を掲げて取り組んでいます。地震から約2年となる現在では、熊本における企業の投資はV字回復を遂げ、好調であった地震以前の水準を上回る勢いです。

被災しながらも復旧に献身

── 復興に取り組んだ熊本県の人々の働きを教えてください。

新浪 
震災後8ヵ月でのビール出荷再開は地域を元気づけるニュースとなった
需要期である12月のビール出荷再開を目標に定め、ピーク時は一日約600人が復旧作業に従事しました。一方、工場生産がストップする中で、工場内の片付け・清掃だけでなく、代替生産を行っている他工場の応援、工場の業務範囲を超えた自動販売機の補充や店頭営業活動などにも従事し、一人ひとりができることに全力を尽くしました。県や町など行政機関のバックアップも受け、2カ月で配送センターが復旧、7カ月後には「ザ・プレミアム・モルツ」の仕込みを再開するなど早期復旧ができました。従業員からは、給排水が使えない時期に手作業で徹底的に衛生管理を行う工夫や、作業を最短で実施する提案も出てきました。

蒲島 熊本の県民性は、「簡易・善良・素朴」を愛するとともに、一度決めたら必ずやるという一徹さがあります。被災企業の従業員は多くが自らも被災しており、家も壊れたままの方もいましたが、多くの企業で献身的に事業再開に立ち向かう姿が見られました。
また本県は、毎年多数の理工系新卒者を輩出しており、人材の宝庫です。そのため特に半導体産業や自動車産業など、ものづくりの分野で数多くの企業が立地し、産業集積が進んできました。近年は、産学官が連携して産業人材の育成に力を入れる他、県内就職の促進も強化しています。これらの人材も創造的復興に大きな役割を果たしてくれると期待しています。

── 地元とのつながりはどのように感じられましたか。

新浪 
サントリーの復旧支援により「冬水田んぼ」では2年ぶりに稲が収穫された
熊本産のおいしいビールを早く飲みたいという地元の方々の声が励みになりました。また多くの取引先の方々にも工場再開の時には皆わが事のように喜んでいただきました。
当社では熊本を皮切りに各地の工場地域で「天然水の森」という水源涵養(かんよう)活動に取り組んでいます。これは地域行政や有識者、NPOの方々の協力もいただきながら、工場で使用する地下水の2倍の量を育めるよう、水源である森の涵養に取り組む活動です。また、震災を機に熊本にコミットした復興支援活動「サントリー水の国くまもと応援プロジェクト『ずっと、あなたと、熊本と。』」を展開しており、地元に根付いた様々な芸術やスポーツ活動、コミュニティー活動などを地域の皆さんと一緒になって推進しています。また地下水の研究を熊本大学とコラボして進めるなど産学官一体となった取り組みにも力を入れています。

蒲島 サントリーの長年にわたる地域貢献には心から感謝しています。熊本工場も県民に親しまれており、出荷再開のニュースは県全体を明るくしてくれました。
くまモンも登場したサントリーコーヒー「BOSS」のCM
また、くまモンが登場した御社のCMにも大変勇気づけられました。
サントリーのように誘致企業が県民に愛され、長く熊本で操業していただくことは、地域経済の発展や雇用の確保の面からも大変重要です。県では、「選ばれる熊本」をモットーとし、地元市町村とともに、誘致企業に対する進出前後の細やかなサポートを心掛けています。

地震の経験生かし新たな熊本へ

── 復旧後、そして今後の熊本県での取り組みについてお聞かせください。

新浪 完全復旧だけにとどまらず、昨年は製造ラインを増強、さらに熊本県産の「河内晩柑」を使用した天然水ブランド初のエリア限定品を作りました。これも知事のおっしゃる創造的復興といえるでしょう。今後も熊本のお客様に親しまれるような商品を開発していきたいと思っています。

蒲島 創造的復興に向け、さらに多くの企業に進出してもらえるように取り組みを進めます。アクセス面では、熊本市から大分市までを結ぶ中九州横断道路をはじめとする幹線道路の整備促進など、さらなる利便性の向上を目指します。阿蘇くまもと空港については、民間の知恵と資金を活用した復旧と機能強化を進め、熊本港・八代港についても、物流機能の向上やクルーズ船の拠点化を進めることで、「アジアに開くゲートウェイ化」を推進していきます。また、さらなる「知」の集積を目指した企業の研究開発部門の誘致、企業の本社機能の移転、東アジアなどのグローバル企業の誘致等にも積極的に取り組みます。
熊本県は、九州の中心でアジアに近い地理的優位性、半導体・自動車などの産業集積、優秀な人材に加え、熊本地震でもサプライチェーンを堅持した逆境に負けない協力企業群の存在があります。今後も地震の経験を生かした活力ある熊本づくりを進めてまいります。ぜひ、意欲ある企業に進出していただき、ともに熊本を盛り上げていただければと思います。

熊本県は、企業の進出を全力でサポート

  • 製造業を中心に、最高50億円の補助金を用意※1
  • IT企業、コールセンターなど、サービス産業も幅広く支援 ※2
  • 研究開発のスモールスタートをバックアップ※1
  • ※1 熊本県企業立地促進補助金
  • ※2 熊本県産業支援サービス業等立地促進補助金

企業立地は熊本県へ

詳しくは、公式ホームページをご覧ください

お問い合わせ

◎熊本県企業立地課
〒862-8570 熊本市中央区水前寺6丁目18-1
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E-mail:kigyouricchika@pref.kumamoto.lg.jp
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