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次代見据え先進技術で製品開発

中部地区 統括セールスマネージャ 亀元政秀氏

アナログIC大手のリニアテクノロジーは2015年、高精度・高効率・高信頼性・小型ソリューションを実現する高性能アナログICで自動車を一段と進化させる。その開発課題は、バッテリー監視から安全性・利便性・快適性まで、車両機能のほぼ全域にわたる。中部地区の販売を統括する亀元政秀氏に同社を取り巻く環境や今年の戦略、注力製品などを聞いた。

自動車向けICに注力

──まずは国内の自動車市場におけるこれまでの取り組みを伺います。

亀元:当社が自動車向け製品の開拓拠点として名古屋支社を設置した2001年当時、国内の自動車に搭載可能な高性能アナログ半導体は黎明(れいめい)期といえる状態でした。選択肢が少なく、現在に比べて低性能の製品が主流でした。

そのような中で当社は高性能アナログ半導体の可能性を確信し、入力電圧耐圧が高く温度範囲の広い高効率・高精度かつ小型ソリューションを実現する製品をいち早く提案してきました。その後、自動車のエレクトロニクスは大幅な機能向上と回路の小型化、コストダウンが進みましたが、そこには当社の課題解決型の製品提案が貢献しています。

──先見の明ですね。


リニアテクノロジー株式会社
中部地区 統括セールスマネージャ 亀元政秀氏
亀元:これから自動車開発が直面すると思われる課題は何か。その解決に不可欠なアナログICとはどのようなものか。それらを早期に見極め、常に最新の技術で応えてきました。

市場の潜在的問題の発見と克服を両輪とする開発姿勢こそ当社の設立当初からの伝統であり、原動力です。自動車分野も例外ではありません。この取り組みを支えるのが、米国本社の設計技術者を日本に呼んでユーザーの課題を聞き出し、製品開発とサポートに直接反映させる体制です。

ユーザー自身も気付いていない本質的なニーズを引き出し、それを最新技術で具現化することが最終的にイノベーション( 技術革新)につながるよう心がけています。

01年に車載機器メーカーのお客様に注力するため、名古屋支社はたった1人の技術営業から始まりました。現在は多数の技術営業、応用技術、品質担当など車載機器の専門知識にたけた人材を配置。お客様からの要望に迅速に応えるよう努めています。また、主にお客様の回路検証のため、最先端の機材をそろえたラボ(研究施設)も備えています。

このような自動車向け製品の開拓が身を結び、自動車分野の売り上げは今や国内売上高の45%以上を占め、最大の柱にまで成長しました。

日本の自動車は世界の最先端を走り続けています。本社もその点を十分認識しており、日本市場で成功すれば世界中のどこでも通用すると明言しています。当社が提案する国内の自動車向けアナログICは世界基準になりつつあります。

エネルギー、安全・利便性に的

──最近の課題と注力している製品をお聞きします。

亀元:当社が考える今日の自動車のテーマは大きく3点に集約できます。1つは持続可能な社会に向けた自動車燃料多様化への対応。2つはガソリン車の未来。そして3つは搭乗者の快適性・利便性・安全性の向上です。

これらをアナログICの視点から考えると、(1)エコロジーを支える「エネルギーマネジメント」(2)先進運転支援システム(ADAS)を軸にした「安全性」(3)表示などの「利便性・快適性」――という3つの課題が浮かび上がってきます。15年は、これらを大幅に前進させる製品群を提案していきます。

エネルギーマネジメントについては、バッテリーの管理を飛躍的に効率化したバッテリーマネジメントシステム(BMS)に引き続き注力します。その中核は、従来比3倍以上の電圧計測精度を実現したバッテリー監視IC「LTC6804」です。高いセル監視能力を持つこの製品は、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の走行距離を大幅に伸ばし、コストと重量を削減します。外部コントロール用のインターフェース部もインバーターなどからのノイズに強く、次世代自動車に必須のデバイスと評されています。

セルの均等化エネルギー効率を飛躍的に上げるアクティブバランサーも脚光を浴びています。大電流向けでセルとスタック間で双方向のエネルギー移動が可能な「LTC3300」および、小電流向けで一方向の均等化に特化し、簡易にソリューション設計が可能な「LT8584」と、お客様のニーズに合わせたラインアップを評価用のデモキットに加え、ソフトウエアとともに取りそろえており、反響も上々です。

エネルギー回生システムへの取り組みも強化しています。電気モーターを使い分けるマイルドハイブリッド車などは、回生エネルギーを蓄えた高電圧のリチウムイオン電池などから鉛電池への充電時に高効率の降圧電源が不可欠です。最新製品の高効率コンバーター「LTC3892」は、従来品に比べ変換効率や使い勝手を改善しており、より高性能なシステムを設計できます。

また将来に向けて、一部の補機などを高電圧リチウムイオンから給電する要求が出ており、鉛電池との間で高効率な双方向のエネルギーのやりとりが必要になります。それには入出力耐圧80ボルトの同期整流式双方向昇降圧DC・DCコントローラー「LT8705」が最適です。

このほかにも現在、ガソリンエンジン制御には窒素酸化物(NOx) 、酸素(O2)などのガス、粒子状物質(PM)などのモニタリングや点火時の温度管理などで様々なセンサーが使われており、ますます高精度な信号処理が求められています。

最新製品の「LTC2983」は高分解能のADコンバーターとマイコンを搭載し、セ氏プラスマイナス0.1度の精度の温度監視機能をワンチップ化した製品です。同時に20カ所まで熱電対などのセンサー入力に対応しており、引き合いが急速に強まっています。また、「LTC6087」「LTC6088」を代表とする高精度オペアンプは特に入力電流特性と低ノイズにこだわり、高温での直流精度特性などをデータシートで保証しています。そのため車載センサーの用途に最適で、広く検討と採用が進んでいます。

──安全性に対する提案も盛んですね。

亀元:ADAS機能が小型車にも搭載されてきており、回路の小型化とエネルギー消費の効率化が求められています。これに応えるのがパーフェクトスイッチャーと呼ばれる降圧電源IC「LT86」シリーズです。様々なADASアプリケーションやドライブレコーダー、駐車補助装置などに相次いで搭載され始めています。

15年は、多チャンネルに進化した2チャンネル対応の「LT8616」、4チャンネル対応の「LT8602」を発売する予定で、さらなる小型化要求に対応していきます。これらのシステムではASIL対応による電圧監視も重要になっており、消去可能な読み出し専用メモリー(EEPROM)内蔵6電圧監視IC「LTC2933」などへの興味が高まっています。

一方、利便性や快適性の追求で進化が加速しているインフォテインメント分野では、コックピット表示回路のノイズ処理が課題となっています。「LT8640」は最新の5アンペア出力可能な非常に高効率な高耐圧小型モノリシック降圧電源です。スイッチング動作やパッケージングの工夫によるEMIノイズキャンセル機能と周波数拡散機能で、あらゆるノイズのレベルを徹底的に下げた最新のサイレントスイッチャー機能を備えており、ノイズに敏感な車載アプリケーションに最適なソリューションといえるでしょう。

顧客価値追求を前面に

──最後に、このような多様な製品群を生み出す企業風土についてお聞かせください。

亀元:当社は、アナロググルと呼ぶベテラン設計者を中心に開発チームを組み、ユーザーと向き合う体制を堅持しています。これがアナログICのカルチャーを薄めることなく伝承することを可能にします。

このような組織風土を支えているのが「仕様書に書かれていない顧客価値の追求」という考え方です。原則的に製品の製造を中止しない方針を掲げ、部品変更の難しい自動車や産業機器のエレクトロニクスデザインで製造中止の心配がありません。

次に、製品ごとに半年分ものウエハー在庫を保有する「ダイバンク方式」を確立することで、お客様の需要変動に柔軟に対応し、短納期を実現しています。

また、長期信頼性試験に加え、出荷前に製造ロットごとの短期信頼性試験を欠かさないなどの品質体制を整えています。これにより、車載機器メーカーのお客様からの厳しい品質要求に対して高品質製品と迅速な対応でお応えしています。

生産工程の冗長性確保も大きな利点です。お客様の事業継続計画(BCP)確保の観点にもお役に立てます。これらは全て目に見えない顧客価値を優先する姿勢の表れです。

当社はお客様のアプリケーションのニーズに特化したソリューションセミナーや無償設計シミュレーター「LTSpice」の講習会などを積極的に実施しています。お客様の市場開拓に貢献する伝統的姿勢と、常に数年先を見定めるノウハウ、そこに盛り込む最新技術を武器に、今後も革新的提案を重ねていきます。