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低コストのモバイル活用 需要捉え業績拡大へ
MM総研所長 中島 洋
今年の日本経済を動かす柱は、復興需要とアジア市場の2つだ。この動きを取り込み、コスト削減から売上拡大へと経営戦略をシフトすることが求められている。そこで大きな役割を果たすのがIT(情報技術)だ。MM総研所長の中島洋氏は「急速に普及するスマートフォン、タブレット端末とクラウドサービスなどを組み合わせ、業績向上に転じるとき」と指摘する。
大きな可能性秘めるスマートフォン、タブレット端末
MM総研所長
中島 洋氏今年は東日本大震災からの復興需要が顕著に現れてくる年になるだろう。昨秋から景況は着実に回復し、震災による業績落ち込みを取り戻そうという浮揚感が出てきた。経営課題も、コストダウンから売り上げ拡大や顧客拡大、商品メニューの拡大に移ってきている。
一方で、欧州の金融不安の影響が懸念されているが、欧州との貿易は既に小さくなっているので、中堅・中小企業への影響は限定的だと思われる。それよりも、日本との貿易が大きな比重を占めるアジア市場に目を向けた方がよい。
アジアには中国やインドネシアなど成長余力を持つ未開拓市場が多くあり、製造業だけなく、流通・サービス業にも大きな可能性がある。新興諸国は、日本が歩んできた道を急追している。これまで特色ある事業を展開してきた中堅・中小企業にとっては、蓄積したマーケティングノウハウを生かすことが可能だ。
こうしたなか、国内外を問わず新たな市場に活路を求めるなら、消費者や顧客のニーズを俊敏に把握して即応することが大きなポイントになる。
昨今マーケティング分野では、ツイッターやフェイスブックの活用が急速に広がりつつある。これらは少ない投資でできるので、中堅・中小企業も取り組みやすい。またハードウエアでは、スマートフォンとタブレット端末が大きな可能性を秘めたツールとして出てきている。情報を得た瞬間に即座に入力、発信することが可能になる。
身近になったITで新たな市場を開拓
ツイッターやフェイスブックの特性を生かして地域にしばられない新しい市場を開拓し、ビジネスに役立てるためには、センスの良い従業員を育てることが重要だ。消費者に認められる良い商品・サービスは、感性が鋭くないと作り出せない。ネット上のビジネスやサービスなどを実際に体験し、そこでの魅力を作っていく感性が求められる。
昨年亡くなったスティーブ・ジョブズが評価されるのは、自らの感性で魅力ある商品を生み出し、新しい市場を切り開いてきたからだ。スマートフォンは、電話機が携帯電話へと進化してきた延長線上にあるが、感性に訴える操作性を実現したことで市場を爆発的に広げた。さらにその上にアプリケーションを集める仕組みを作ったことでアプリケーションが増え、小型パソコンに近い情報端末に変わっていったのだ。
つい最近まで、業務用入出力の最新機器としてはタブレット型PCが使われていたが、今ではスマートフォンで十分間に合うし、画面がもう少し大きい方が良ければタブレット端末を使えばよい。膨大なデータ処理が必要な場合にはクラウド上で行い、そうでないものはスマートフォンやタブレット端末を使うのだ。
例えば、5人の営業担当が毎日の営業記録をそれぞれのパソコンに入力して、それを後でまとめるのは大変だが、クラウド上で最初からまとめる形にすれば簡単だ。入力はスマートフォンかタブレット端末で十分である。サーバー側に業務アプリケーションを置いて、端末側は入出力機器に徹した使い方をすれば、投資も少なくて済む。営業資料の整理作業に業務全体の3~4割を費やしていたとすれば、ほとんどの場合1~2割以下で済むようになる。
また多様なアプリケーションが、ネットワーク経由でソフトウエアを利用する「SaaS(サース)」形式で提供されているので、各企業の事情に合ったものを適宜選んで使うことができる。中堅・中小企業にとって、ITは格段に使いやすく、手が届きやすいものになってきている。
情報力を高め人を増やさず営業力強化
急な人員増が難しい中堅・中小企業が売り上げ拡大を目指すとき、こうしたIT活用ならば、大きな投資をせずに効果的な営業力強化が可能だ。受発注や業務報告などの営業情報のやり取りがいつでもどこからでも簡単に行えるようになるだけでなく、トラブルや相談ごとが発生したときの情報共有、対処が格段にスムーズになり、スピードアップする。
このように、普及しているツールをうまく活用することで、社内コミュニケーションは大きく進化し情報力が高まる。経営者の意思を従業員に伝えやすくなるとともに、営業活動の様子のツイッターでの報告など、従業員の活動も経営者に伝えることが簡単にできるようになる。
一方で、情報発信ツールが使いやすくなればなるほど、間違って外部に発信したりすることのないように、情報保護の仕組みが重要になる。特に中堅・中小企業の場合、情報保護の担当要員がいないため、取引のあるベンダーなど外部の力を借りて、従業員に対する訓練や研修などをきちんと行うことが必要だ。
2012年は、多くの企業が飛躍する年となるだろう。新しいツールを効果的に使い、クラウドサービスとの組み合わせで、売り上げや顧客、商品メニューの拡大による業績向上を実現する施策が求められている。
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