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ウェブサイトで直接受注 原価管理徹底し利益確保

梶フエルト工業株式会社 代表取締役 梶 朋史

工業用フェルトの加工・販売を行う梶フエルト工業(東京・墨田)は、2008年のリーマン・ショックで需要が減少したのを機に、ウェブサイトでの直接受注と経費構造の見直しによる原価管理の徹底に取り組んだ。ホームページを販売目的にリニューアルしたことで部品メーカーから直接注文が入るようになり、また原価管理の徹底によって、現在、売り上げはリーマン・ショック前から1割ほど減少しているにもかかわらず、同レベルの利益を確保している。

原反製造をやめ加工・販売専業に


梶フエルト工業社長
梶 朋史氏
フェルトと関連商品の加工・製造販売を行う梶フエルト工業は、1921年に羊毛小型フェルトメーカーとして創業したが、95年に原反のプレスフェルトの製造を廃止し、フェルトの加工と販売を中心とした事業に移行した。同社では現在、大手メーカーが製造するフェルト原反を購入して打ち抜き、シールを貼るなどの加工を行って販売している。

同社社長の梶朋史氏は「フェルトは天然繊維なので、湿気などの環境によって状態が変わります。工業部品として製品化するには専門のノウハウが必要ですが、それはフェルトの特性でもあり、うまく設計すれば良い部材になるので、いかに理解して使ってもらうかが大きな課題です」と語る。

フェルトは、マスクなどに使われる不織布、羊毛とレーヨンを混ぜて作るプレスフェルト、繊維を選ばないニードルフェルトの3つのタイプがあり、断熱、保温、クッション性に優れているため、工業用のパッキン材やクッション材から服飾製品まで幅広い分野で使われている。最近では、羊毛フェルトの油を吸収しやすい特性を生かして、モーター用の給油材として使われるなど、用途が広がっている。

受注と生産管理をIT化

梶社長は入社した直後の90年、受注管理、生産管理のためにパソコン用データベースソフトを使って自らシステムを構築、個人的に管理業務に使っていた。その後、父の後を継いで社長になり加工業に転換した95年に、ネットワークで社内を結び、受発注から生産、検品、梱包、出荷までの基幹業務プロセスを一元管理できるシステムを構築した。これにより、受注を入力すると工場で使う加工伝票が発行され、作業後は実績入力や原材料の在庫を引き落とす作業フローができた。

ただ、それまで一人で使うために構築したシステムだったので、他の従業員にも使いやすくするためにITコーディネーターにシステムの分析を依頼、また、以前からデータ保管をしていたファクスの受注伝票を含めた社内の最新情報を、外出先からでも確認しながら業務が進められるように、仮想私設網(VPN)によるリモートアクセスを導入していった。

ホームページ一新し販売に注力

さらに、会社案内でしかなかったホームページを一新して、販売目的のサイトにしようと考えたのは、2008年のリーマン・ショックがきっかけだった。

「需要が減ることがはっきりと予測できたので、これはサイトを作る時間ができるなと思いました。09年1月、フェルトの切り売りから、加工・製品パッケージまで、多品種少量生産・短納期・特殊加工ができることをうたい、顧客が直接問い合わせや注文ができる新しいホームページに切り替えたのです」(梶社長)

それまでの顧客、化成品問屋との取引では、最終的な納入先やフェルトの用途、使われ方を示した図面などは一切明らかにされていなかった。同社ではそれ以前にも、納入先である部品メーカーからの問い合わせができるようにしようとしたことがあったが、問屋の仕事に踏み込む懸念もあり、直接の問い合わせや受注には踏み出しかねていた。しかし需要減を機に思い切って決断し、ウェブサイトを全面的にリニューアルしたのである。

用途明確化で社員の士気向上

 「タイミングも良かった。問屋の担当者の多くが若い社員中心になってきたため、過去の事例や製品に関する知識などについて私たちが様々なアドバイスをする関係になっており、動きやすい状況が生まれていたのです」(梶社長)

新しいウェブサイトを導入して2年半余りの間に、それまで受注実績のなかった大手メーカーをはじめとして直接受注の件数は着実に増え、現在では一部上場の部品メーカーなどの設計部門や購買部門から、コンスタントに問い合わせや注文が入ってくるようになった。直接受注をするようになってからは、製品の用途が発注時に明示され、図面も提供されるので、製品も作りやすくなった。

 「以前は何に使うかが分からなかったため、部品として最適な製品を提供しているかどうかの判断もできずに、ただ出荷しているだけでした。今は新規のお客様には、フェルトの特性の説明から入りますが、特性を分かっていない場合も多く、厚さ10ミリメートルの製品が湿気を吸い込めば1ミリメートルは厚くなるのに、図面には『プラスマイナス0.1ミリメートル以内』などと書いてあります。そうしたことも含めてアドバイスすることで、部品の品質向上に貢献しているという気持ちを持てるようになりました」(梶社長)

社員も今までは受注の規格に合っているかどうかだけを考えていたが、用途が明確に示されることで様々な判断ができるようになり、専門知識が生かせるようになる。やりがいも生まれ、積極的に工夫や提案をするようになった。

現場の声聞き迅速に情報共有

一方、経費構造を徹底的に見直し、原価管理を徹底したことで、売り上げはリーマン・ショック前のピーク時と比べて1割ほど減少したものの、現在もリーマン・ショック前と同レベルの利益を確保できている。「経費の洗い出しで、今まで採算が合っていなかった仕事が見えてきました。この見直しをしていなければ、忙しいが、何をやっているかよく分からない状態が続いていたかもしれません」(梶社長)

また原価管理を徹底した結果、案件ごとに「何分で作ってほしい」という目標製造時間も出し始めている。目標時間を明確に出せば、皆その間に完了させようとする。

現場からは、目標が「時間」だと作業者が十分認識できないこともあるので、作業を「金額」に換算して提示してほしいという声も出ている。例えば、作業者の時給が1000円なのに、500円の仕事を1時間かけてやるのは原価オーバーになってしまうことが分かる。こうした点も含めて、原価管理のやり方については、引き続き検討していく必要があると梶社長は考えている。

「私はパソコンが世の中に普及し始めた30年ほど前から仕事にパソコンを使い始めましたが、技術者でもありませんし、コンピューターに詳しかったわけでもありません。ただ、仕事に役立てたいとの一心で、試行錯誤で使ってきました。中小企業経営者は、IT(情報技術)というと難しく考えがちですが、実は簡単。使う目的がはっきりしていて自分で導入すれば、大きな費用もかかりません。中小企業では、何をやりたいかをはっきりさせて、人任せにせずに、活用してみることが大切だと思います」(梶社長)

梶フエルト工業では現在、誰でも簡単に使えるタブレットPCを製造現場に導入するとともに主要な社員にも配り、それで図面や仕様などの最新情報を見ながら作業をしている。そうしたなかで、梶社長がいま最も大きな課題と考えているのは、原反入庫時の連絡の仕方だ。材料の到着状況をいちいち現場の作業員が見に行く今のやり方では、作業上の無駄も生じる。現場で作業している間でも、いち早く情報を共有できる仕組みを、ITを使って作ろうと考えているところだ。

会社概要

社名 梶フエルト工業株式会社
本社 東京都墨田区東向島5-41-18-LG1301
代表者 代表取締役 梶 朋史
URL http://www.kajifelt.co.jp/

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