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ITで時計修理業務を大幅に改善

共栄産業株式会社 代表取締役 小林 正博氏

海外高級時計の修理を中心に、時計や電池の卸売りと店舗運営を展開する共栄産業(東京・豊島)は、時計修理業務の改善とIT(情報技術)による修理品管理で、5年間で年間修理件数を倍増、赤字だった修理部門を黒字化、稼ぎ頭にまで成長させた。さらに、顧客がスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)で修理状況を把握するシステムを開発中で、顧客満足度と信用力の一層の向上を目指している。

非効率業務が大きな課題に


共栄産業 社長
小林 正博氏
共栄産業は1968年に時計用電池販売を開始、現在海外ブランドの機械式時計修理を中心に、海外高級時計と電池などの卸売り、百貨店などでの店舗運営を行っている。

同社が時計修理を始めたのは10年ほど前。電池交換に伴うトラブル対応や簡単な修理を行い始めたのがきっかけだ。その後、日本の時計修理の第一人者を会社に招いたことから修理技術者が集まり、時計メーカーから難しい修理依頼が集まって来るほどに信頼を高める。2000年には、従来スイスに送っていた複雑な故障修理の依頼も来るようになった。

「当時、30人ほどの職人で月に3000個ぐらいを修理するまでにはなっていたのですが、修理部門としては毎月数百万円の赤字が出ていて、それを卸売部門が補填する状況でした。赤字を生み出していた最大要因は修理業務の非効率さでした」と共栄産業小林正博社長は振り返る。

事務部門は技術者の業務内容を把握できず、修理時間もまちまちだった。また、自分の技術にこだわりを持っている技術者は、自分が興味を持った、より難しいものから修理していた。そのため、簡単に修理できるものが、納期遅れになることもあった。また、データベースソフトで修理依頼顧客を管理していたが、修理品と顧客台帳がひも付けられていないため、キャンセルがあっても該当修理品のありかが分からない、非常に非効率な状態だった。

工程の効率化、可視化を実現


全国から高級機械式時計の修理依頼が集まる
そこで同社では05年、トヨタ自動車グループ出身のコンサルタントを招き、修理工程の改善、効率化に向けた取り組みをスタートさせた。そしてほぼ同時に、工程をシステム面で支えるための独自のシステム開発に着手した。

「コンサルティング内容は今までのやり方を否定されることばかりでしたが、トヨタの生産管理方式の考え方を入れて、業務のやり方を根本的に変えました。具体的には、作業用具類の整理・整頓から始めて、作業スペースの仕切りをなくしたオープン化、作業工程の分業化、工程上にある修理品の見える化などを行いました」(小林社長)。例えば可視化では、それまで扉の付いたロッカー棚に保管していた修理品をオープン棚に置くことで、修理の進み具合が一目で分かるようにした。

一方、新システムは、修理品の受付・入庫、見積もり、修理、出庫・納品までの全工程を一元管理するものだ。職人は修理部門に設置されたパソコンで修理品収納箱のバーコードをスキャンし、修理の開始と完了を記録する。情報はデータベースに集約されているため、社員は修理品ごとに作られたカルテで、担当者や修理段階、納品予定などの進捗状況を確認できる。また、職人の1日当たりの修理個数など、修理業務全てを把握できるようになっている。

処理件数倍増で部門黒字化

業務改善とIT化を進めたことで、技術者は1日に平均で2個半から3個の修理ができるまでになり、顧客の問い合わせにもスピーディーに答えることができるようになった。その効果は極めて大きく、技術者数は05年当時から若干増えた程度であるにもかかわらず、現在、月間の修理個数は約2倍の7000個にまで拡大している。その結果、修理部門は毎月黒字に。会社全体の稼ぎ頭となって、他部門を助けるようになっている。

「時計メーカーでも、技術者は1日1個修理できれば一人前ですから、これは大変な効率化です。加えて、メーカーでも5%ほどある再修理率は2%を切るようになりました。修理作業の効率化だけでなく、高い修理品質も実現しているケースは他になく、スイスの時計メーカーが何回も見学に来ています」(小林社長)。

05年の稼働開始以来、社内の要望をまとめる形で、システムを年に3~4回バージョンアップしている。その中で、10年には修理品を預ける取引先が直接、進捗状況などを確認できる企業間連携システムを開発、導入した。これによって取引先は、簡略化したカルテを閲覧し、顧客からの問い合わせに迅速に対応できるようになった。

共栄産業では現在、修理を依頼した顧客がスマホなどを使って、直接修理情報を確認できる仕組みの開発を進めているところだ。ITの効果的な活用によって顧客満足度を高めながら、時計修理業界での一層の信用力の向上と収益力の拡大を図っていく考えだ。

会社概要

社名 共栄産業株式会社
本社 東京都豊島区巣鴨1-19-12
代表者 代表取締役 小林 正博
URL http://www.kyoeico.com

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