NIKKEI

トップ>IT活用事例インタビュー>ITで世界に販路 知恵と勇気で活路開く

ITで世界に販路 知恵と勇気で活路開く

株式会社メトロール 代表取締役社長 松橋 卓司氏

高精度接触式センサーメーカーのメトロールは、現在64の国と地域に取引があり、売上高に占める海外の割合が60%を越える。
同社はIT(情報技術)を活用して海外顧客とダイレクトに取り引きし、販路を拡大。その結果増えた商品の管理に統合基幹業務パッケージ(ERP)を導入し、適正在庫の確保やリードタイムの短縮を実現した。

増えすぎた商品管理に苦慮


株式会社 メトロール
代表取締役社長 松橋 卓司氏
メトロールがグローバル企業になったきっかけは、10年以上前、同社に舞い込んだ1枚のファクスだった。松橋卓司社長は当時を振り返りこう語る。「当社の製品を取り寄せたいが、高価で取り寄せに何カ月もかかると。それで調べると、海外顧客との間に多くの業者が関わっていたからと分かったのです。これをダイレクトにすれば、安く早く届けられる。そこで、当時黎明(れいめい)期だったEC(電子商取引)サイトを海外向けに立ち上げました」

検索広告でECサイトに顧客を呼び込み、クレジットカード決済で日本から直接品物を送る。これにより、従来月単位でかかっていた納期が約1週間になり評判は上々。取引先はどんどん広がっていった。

しかし一方で、社内では困ったことが起きていた。顧客の要求に応えているうちに、商品点数が増えすぎて、とても人手では管理できなくなってきたのだ。

ERP導入し適正在庫実現

現在メトロールが扱う商品は約700点。それらは、独自の7,000点に及ぶ部品から成る。これらを確実に管理し、欠品なく適正な在庫を確保するために、2008年、業務管理システムの導入に取り組み始めた。

「ところが、独自システムにこだわって大失敗。構築したシステムが使い物にならず、検収に至りませんでした」(松橋社長)。そこで、もう二度と失敗したくないと、ITマネジメント・サポート協同組合で製造業に強いITコーディネーターを紹介してもらい、翌年再チャレンジ。アドバイスに従い、より安価に早く構築できるパッケージを検討した。

まず4ヶ月かけて要件定義を実施。数社でコンペを行い、製造業に強いMRP(資材所要量計画)システムを備えたERPに決定した。導入の際に決め手となったのは、自社データでのデモ。「われわれは、ベンダーのアイデアや提案が欲しいわけです。そのためには優秀な人に担当してほしい。そこで、実データで対応力を知りたいと思ったのです」(松橋社長)

もう一つ、同社のERP導入の特長は、全部門でマスターデータを統一したこと。通常、部門ごとに必要なデータが異なるため、同一マスターでシステムを構築することは難しい。社内調整がうまくいかないことも多い。その点、同社は間接部門がないため仲介者がなく、当事者同士が腹を割って議論をすることで、この壁を乗り越えた。

これにより業務プロセスの可視化が実現。自動発注による適正在庫の確保やリードタイムの短縮、正確な納期回答などが可能になった。業績もリーマン・ショックの年以外は右肩上がりで上昇し、導入前に比べて社員は約2倍、売り上げは約3倍に拡大している。

社内ブログ、情報共有に威力発揮

同社のIT活用はこれだけにとどまらない。営業日報代わりに社内ブログを立ち上げ、係長以上は全員閲覧できるようにしている。中国、台湾、インドにも拠点があるが、全拠点が同じブログを共有することで、いち早く情報共有が可能になる。

「例えば、中国での営業情報がブログに載ると、指示がなくても製造部門では必要な部品を発注します。インドでは、それを見て、同じようなところにアプローチをしてみようと動く。全員が必要な情報を共有しているので、会議でも無駄な報告や議論がなくなり、極めて本質的な議論のみに集中できるようになりました」(松橋社長)

社外向けには、英語版のフェイスブックが活躍している。マーケティング部門の女性が前面に出たところ、数カ月で世界の金属加工技術者が3,000人集まり、コアなネットワークができあがった。ECサイトも、当初はユーザーに保守部品を届けるために立ち上げたが、現在は機械メーカーが試作品を作るための部品発注の場としても利用されている。

松橋社長は、日本の中小企業にこんなエールを送る。

「世界とダイレクトにつながれば、中間マージンがかからず、為替レートの影響も少なく済みます。英語版のECサイトを作って、検索広告で呼び込み、決済はクレジットカード、発送は国際小包と、道具は全てそろっています。極東にいるハンデは全くない。上場企業はコンプライアンスが厳しく簡単に動けませんが、その点中小企業は、知恵とアイデアと、ちょっとした勇気があれば、経営者の決断一つで踏み出せます。日本の中小企業にこそ、海外に販路を拡大してもらいたいですね」

会社概要

社名 株式会社メトロール
本社 東京都立川市高松町1丁目100番地 新立川航空機内25号棟5F
代表者 代表取締役社長 松橋 卓司
URL http://www.metrol.co.jp/

活用事例インタビュー一覧へ

日経産業新聞 ビジネス動画 動画で見る、話題の新製品・先端技術 詳しくはこちら

日本大学 通信教育部

月間アクセスランキング

  1. 企業マネジメント最新トレンド
    グローバルに対応しうる事業戦略とは
  2. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の具体的な改正内容とその対応のスケジュール
  3. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の2015年改正を契機としたISOの活用方法
  4. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の2015年改正における具体的な取組み方法
  5. 企業マネジメント最新トレンド
    企業価値とは何か。経営にどう影響するのか

日経産業新聞ピックアップ

2017年8月23日付
  • 富士フイルム、橋やトンネルのひび割れ、画像で自動診断
  • JTがアトピー薬19年発売 たばこ一本足の脱却へ前進
  • 水ing、自治体向けに省エネし尿処理設備 CO2を2割削減
  • ゲスタンプ、熱間プレス、加工速度2.5倍 来年から量産へ
  • 東急リバブル、リノベ物件の資材一括調達 施工業者の負担軽減

経営喝!力 ビジネスIT活用index