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顧客データ分析の徹底で8期連続2けた成長を実現

株式会社オオクシ 代表取締役 大串 哲史氏

千葉県千葉市に本社を置くオオクシはオーバーストア状態にある理容・美容市場で、伝統的な理容店からスタートし、現在22店舗を展開する理美容チェーンに成長。8期連続2けた成長を実現している。その成長の背景には、明確な目標の下にIT(情報技術)を道具として使い、徹底した顧客データ分析を行ってきた実績がある。

コンビニのデータ活用に学ぶ 顧客分析ソフトの開発を決意


株式会社オオクシ
代表取締役 大串 哲史氏
オオクシは1982年に設立された理美容チェーン。同社は性別年齢を問わない新しい業態のサロン「カットオンリークラブ」を中心に、理容室や美容室など 22の直営店を千葉県内で展開し、8期連続の2けた成長、経常利益率10%、年間総来店客数42万人突破という業績を上げている。

 「当社の前身は、1964年に私の父が千葉市稲毛区に開業した個人営業の理容店です。私は理容学校卒業後、他店に数年間修業に行き、92年に24歳で父の理容店に入社しました。しかし経営状態は極めて悪く、借金だらけでやり繰りは火の車、備品が壊れても直すお金がないため、自分たちで修理するようなありさまでした」とオオクシ社長の大串哲史氏は語る。

多くの理容室や美容室は現在も、現場の理容師や美容師の経験と勘で運営されている。オーナーが「あの人がうまい」といえば、その理容師や美容師が優れていることになり、給料や待遇もオーナーが勘で決めている。管理者は来店客数や顧客の来店頻度、スタッフ別の売上などの数字はつかんでおらず、問題点を分析するための基礎となるデータもない場合が多い。

「その対極にあったのが、19歳の時にアルバイトしたコンビニでした。コンビニではPOSレジから来店客数や商品別の売上、天候や周辺の催事による売れ筋商品の予測まで、店の運営に必要なさまざまなデータを得ています。それを見た時には本当に驚きました。そこで、自分が理容店を経営する立場になった時、経験と勘による古い理容業から抜け出すために、コンビニに学んで顧客分析ソフトの開発をしようと考えたのです」(大串社長)

勘と経験からの脱却 分析結果に基づく社員教育

大串社長はデータ分析を行うシステムの開発に取りかかり、同社が出す要件に基づいてソフトウエアハウスが開発を行い、店に導入されたPOSレジのデータを分析するシステムを作り上げた。このシステムでは顧客台帳の代わりに性別、年齢、メニュー別などに分類した顧客カルテを1人ずつ作成し、リターン率(再来店率)とスタッフ一人ひとりの売上が分かるようにした。

店の運営の経験に基づいて、必要項目を抽出してシステムを開発していったため、システム稼働後、作業効率が大きく向上した。併せて、大串社長がそれまでに学び、考えてきた経営理念と、そこから導き出した目標を社員に対して語り続けていった結果、98~99年ごろには、年間売上をどん底の時期の倍以上にまで伸ばすことができた。

「分析ソフトを使った結果、売上が多いのに一見動きが鈍く見えるスタッフばかり注意するなど、自分が思い込みで行動していたことが分かりました。一方で、数字は恐ろしいもので、良いところを探すのにも使えるし、あら探しにも使えます。それをどう使うかは経営者の考え方次第です。そこで私は良いところを探して、褒めるためだけに使うことにしました。そして再来店率が低かったり、売上が上がらずに、落ち込んでいるスタッフに対しては、『サポートするので、一緒にがんばろう』といって応援しました。そして、社員全員が力を付けて目標を達成するためにデータを取ることを明らかにして、売上やリターン率などの数値を公開しました。以来、現在までスタッフ一人ひとりの問題点を見つけ、弱点を克服するために数字を使うという考え方で一貫してやってきています」(大串社長)

ASP型オンラインPOSシステム 再来店率が大幅に向上

そして、2001年にはヘアカラー専門店「ヘアカラーファクトリー」で美容業へ進出し、02年4月には現在の主力であるカット専門店「カットオンリークラブ」1号店をオープンさせた。その後、システムをスタンドアローン型から、アプリケーションサービスプロバイダー(ASP)型のリアルタイムPOSシステムに移行した(図)。これによって、全店舗のPOSレジから直接サーバー上にデータを集約、集計・分析・フィードバックを行うことで、目標を達成するためのPDCAサイクルを月次単位から週次や日次に短縮することができた。また顧客目線で一人ひとりのスタッフの得意・不得意や成長度も見えるようになり、社員の離職率の低下が実現すると共に、顧客の再来店率を向上させることができた。

「ASPシステムには独自のソフトを開発して加え、不必要な数字は出さないように工夫し、欲しいデータは徹底的に細かく出せるようにしています。例えば、カットは126種類に分け、来店客は必ずそのどれかに当てはまるようにしています。そして、レジでそれをコントロールして、来店客一人ひとりの再来店を追いかけていきます。理容でも美容でも、カットは絶対に欠かせませんから、それを押さえることで、すべての顧客をつかむことができると考えています」(大串社長)。

カットをパターン化してそれを主軸に店を運営するようにしたことで、スタッフの教育は非常に楽になり、最小限の労力で最大限の効果を生むようになった。その結果、2010年6月期の平均再来店率は約86%と業界平均と比べて極めて高く、最も高い店では95%を超えている。また、再来店客を獲得する仕組みが出来上がる中で不要なサービスが分かるようになり、過剰になっているサービスを取り止めた。新規出店に際しては不必要な部分を削り、初期投資を抑えることが可能になった。

数値と理念は車の両輪 目標なき数値は意味なし

その一方で、ITが使える部分に対しては、徹底的に道具として利用する。その代表例が最近作り上げた出店分析ソフトだ。「1年ほど前、成功店の要因をすべて拾い出したら、大変な"宝の山"で、その中から共通項が見つかりました。それをフォーマットにして、市販のソフトで出店分析ソフトを作ったのです。これを使って、10年3月、6月、8月と3店舗を出店しましたが、いずれも開店直後から売上は大きく伸び、3~4カ月で月の収支が黒字になりました。2年で投資を回収できる見通しです。中小企業の場合、何をやりたいかがはっきりしていて、どんな数字を出したいかが明確になっていれば、経営に役立つソフトを自力で開発することは比較的容易だと思います」(大串社長)

増収増益を続けている同社は、事業の成長も大切だが、それ以上に倒産しないことが重要だと考え、自己資本比率を高め、実質的な無借金経営を実現している。また投資は前年度の税引き後利益と減価償却費の合算の中でしか行わないことにしている。こうしたキャッシュフローを意識した経営を続ける中で、今後も利益率を向上させ、自己資本比率をさらに高めていく計画だ。人の面では、経営理念と方針に則り、社員全員との信頼関係の下で、一人ひとりに目標数値を出してそれに基づく業績評価を行っていく。顧客の声に耳を傾けながら改善を繰り返し、事業を着実に発展させていく考えだ。

会社概要

社名 株式会社オオクシ
本社 千葉県千葉市稲毛区稲毛3-5-8
代表者 代表取締役 大串哲史
事業内容 サービス業(ヘアーサロン運営、他)
資本金 4000万円
社員数 73名

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