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スポーツサイクル販売で急成長

株式会社 ワイ・インターナショナル 代表取締役 吉田 靖夫氏

埼玉県志木市に本社を置くスポーツサイクル販売業ワイ・インターナショナルは、10万点に及ぶ部品の在庫管理を行っている。店舗網の拡大に合わせて、POS(販売時点情報管理)や販売、仕入れ、商品管理などの機能を統合した基幹業務システム(ERP)を構築しており、POSデータの分析による顧客ニーズの把握や店舗ごとに工夫したウェブサイトの運営、社員ブログなどによる情報発信を積極的に展開している。この5年間、売り上げは年10億円ずつ増加、スポーツサイクル業界トップクラスの企業としての地位を確固たるものにしている。

7分野10万点に及ぶ部品管理が課題に


株式会社 ワイ・インターナショナル
代表取締役 吉田 靖夫氏
ワイ・インターナショナルは、首都圏を中心にスポーツサイクル専門店「ワイズロード」を展開する企業である。究極のクリーンエネルギー(人力)で走る「自転車の世界を通じて、地球を救う」という経営理念の下、スポーツサイクル業界 のトップ企業として、この5年ほど毎年10億円ずつ売り上げを伸ばし、現在の年商は約60億円になっている。 輸入自転車を扱う自転車店として1998年に創業した同社を大きく育てた代表取締役吉田靖夫氏は、40年前に24歳で店を継いだ当時から隆盛のきっかけをつかむまでをこう振り返る。
「女手一つで私を育ててくれた母親が亡くなり、残してくれた店を継いだのです。小さな店でしたから色々とつらい目にも遭いました。祖母の葬式の日に、スーパーに納めた自転車のねじが1本なくて不良品だと言われ、店のある横浜まで届けに行き、さんざんに怒鳴られたこともあります。

こんなことでよいのかと考えていた時、雑誌にスポーツサイクル専門店の記事が載っていたので、訪ねてみました。店主に色々聞いてみると、年に1度はヨーロッパに仕入れに行くというではありませんか。同じ自転車屋でも、これほど違うのかと驚いて、店にスポーツサイクルの部品を置いたのです」
こうして、スポーツサイクルを扱うようになると、店には自転車好きの人が集まり、東京からも自転車を買いに人が来るようになった。それに手応えを感じたことから、スポーツサイクルに特化した販売店を池袋に出店、1990年代半ばには店舗は27店に拡大していた。
「そこで大きな問題になったのが部品の管理でした。スポーツサイクルはマウンテンバイク、ロードレーサー、トライアスロン、ツーリング用バイク、クロスバイク、折りたたみ自転車、BMX(競技用小径自転車)と7つのジャンルがあり、部品は全部で10万アイテム。1つ何万円もするものがたくさんあります。加えて、趣味の塊ですから、社員も7つの分野すべてに精通しているわけではありません。そこで店舗を10店ほどに縮小し、管理体制を見直すとともに、コンピューターを利用した部品の管理を始めることにしたのです」(吉田氏)

社員の力は、感性が必要な商品に注力

同社では、社是や仕事への取り組み方に関する考え方をまとめた「ワイズウエイ」という小冊子を作っている。全部で40項目ほどの内容だが、その中の一つに「回転率の悪さで勝負しろ」という項目がある。デパートのように立地条件の良い店舗では、いかに回転率を良くするかが収益を上げる上で大きなポイントになる。それに対して、立地条件の悪い場所に小さな店を出し、趣味性の高い商品を扱うスポーツサイクル専門店は、回転率がどうしても悪くなる。しかしそうした中でも、商品を在庫のまま寝かしておくのではなく、確実に売れる仕組みを作らないと、企業としては利益を上げることができない。その仕組みを、人間の勘ではなくコンピューターを使って、高い精度を持つ形で実現しようと考えたのである。

「部品管理のシステム化に取り組んで10年以上がたちますが、なお道半ばです。スポーツサイクル業界は小規模な店が多いため、当時は部品にバーコードも貼られていませんでした。そこで、メーカーや問屋に対してバーコードを付けるように要求するところから部品管理を始めました。最近でこそ、量産品や定番品にはメーカーサイドでバーコードを付けるようになりましたが、趣味性が強くなるとダメで、私たちが独自にバーコードを付けて、管理しています」(吉田氏)

ワイズ・インターナショナルがIT(情報技術)を使った部品管理にこだわるのは、定番品はコンピューターで管理して社員の在庫管理などに関わる労力を省き、その力を、趣味性が高く感性が必要な商品分野への取り組みに振り向けるという考えがあるからだ。こうした努力を続けてきた結果、現在では商品の売れ行きデータは、POSシステムを通して販売・仕入れ・商品管理システムに集約される。こうして作り上げられた、POS、販売、仕入れ、商品管理などの機能を統合したERPによって、売れ筋商品や部品などのデータが全社レベルから店舗別まで細かく迅速に分かるようになっている。

店舗の情報発信や情報共有を実現

こうした取り組みと併せて、同社では5年ほど前から、全社を挙げたインターネットの活用を進めてきた。現在では店舗ごとの独自サイト、社員ブログ、オンライン・ショッピング・サイトなど様々なサイトが運営されており、全体のアクセス数は月間800万件に上る。広告費をあまりかけていないにもかかわらず、売り上げが大きく伸びているのは、情報発信の面でインターネットを効果的に活用していることが大きく貢献している。

また、スポーツサイクルは他のスポーツに比べて、用具サイズ選びが大変重要になる。同社では、「サイズありき」という考え方に基づき「徹底サイズ主義」を掲げ、顧客の体格や乗り方にジャストフィットした自転車を作ることを目指している。スポーツサイクルの本場であるヨーロッパのサイズ解析サービスをベースに、同社が長年蓄積した独自のノウハウを加えた日本人顧客に最適なシミュレーションシステム「バイオレーサー」を開発し、理想の乗り方ができるフルオーダー自転車を提供している。

さらに社内では、グループウエアで通達や連絡、報告、スケジュール管理、商品の融通、クレーム管理などの情報共有体制を構築、社員のモチベーション向上や活性化に役立てている。同社は、環境、健康、余暇利用も含めて、自転車がきちんと認知される社会を目指している。それを実現していくため、同社の経営理念に沿った事業を全国に拡大しようとしている。

「事業拡張には、資金を得なければなりません。株式公開をするなら、決算情報などを公開して社員も情報を共有、会社の経営状況を理解できるようにすることが重要です。部品管理だけでなく、外部への情報発信から社内の情報共有まで、ITを使おうということになり、IT活用が一気に進んだのです」(吉田氏)

ERPの一層の精度向上目指す

インターネットが集客や顧客の継続的な関係構築に大きな力を発揮している一方、課題になっているのがERPの一層の精度向上である。例えば、在庫として寝かせている商品を値引きして販売する場合でも、粗利をきちんと確保する必要がある。現在、ERPの精度を一層向上させ、仕入れた商品をいつまでに販売すれば粗利が確保できるかを分かるようにするとともに、商品をメーカーや問屋に自動発注するシステムを構築中だ。

「自動発注システムでは、支店間での移動まで含めた在庫の把握が前提になります。日常の業務の中では在庫管理の精度向上を徹底的に追求していますが、システム面でそれをサポートする体制を実現していきたいと考えています」(吉田氏)

同社は東日本大震災後も、茅ケ崎、新宿の小田急ハルク、有楽町宝塚劇場近くとコンセプトの異なる店舗を出店しており、今後もそれぞれ特徴を持たせた性格の異なる店舗を積極的に展開していく計画だ。今までは7つのジャンルに基づいた商品構成で店の内容を決めていたが、これからは店舗の規模や形態の要素も含め、さらに細分化していくという。商品ジャンルや店舗タイプごとに商品を管理していくにはITの活用が今まで以上に必要になる。加えて、趣味性やメンテナンスの面でもITの活用をさらに進め、ITと社員の感性の力で、顧客の要求にベストフィットしたスポーツサイクルを提供していく考えだ。

会社概要

社名 株式会社 ワイ・インターナショナル
本社 埼玉県志木市本町5-22-26 ワイインターナショナルビル
代表者 代表取締役 吉田 靖夫
事業内容 スポーツサイクル・自転車部品・用品の国内販売
オリジナル商品の企画・製造・販売
オーダー車の製作
スポーツサイクルのメインテナンス・チューンナップ
スポーツサイクルに関するスクール・セミナーの開催
中古スポーツサイクルの買い取り・販売
URL http://www.ysroad.net

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