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クライシスマネジメント

~災害時における強い企業の条件とは~

セッション2

危機的経済環境を変革の梃(てこ)と捉える
~新たなグローバル化の始まり~

避けられない在宅勤務事前の準備が不可欠


日本アイビーエム 専務執行委員
グローバル・ビジネス・サービス事業コンサルティング&システムインテグレーション統括
椎木 茂氏
今、企業にとっての最大のリスクは、日本経済が今後どうなっていくのかということだ。東日本大震災の影響や継続的に起きている放射能の問題、円高といったリスクをどのように捉えていけばよいのか。地震や事故などに対する短期的な事業継続という課題もあるが、危機的な状況の日本経済の中で長期的に事業継続をどう行うかが非常に重要なテーマになるのではないか。

震災による原発事故の影響で、主要国が食品や工業製品の輸入禁止、輸入制限といった措置を実施している。増加傾向にあった訪日外国人旅行者数は激減し、円高により日本企業の輸出モデルは限界を迎えている。エネルギー問題では、原子力発電が日本の電力の約30%を担ってきたが、今回の事故で原子力から液化天然ガス(LNG)などの化石燃料への依存度が高まり、原料コスト高による電気料金などの価格上昇が日本経済を圧迫すると予想される。

また、想定を超える大震災を経験したことで、今後起きる地震への恐怖感や放射能の問題などは、心理的にも物理的にも経済活動の阻害要因となってくるだろう。円高や原料高などから、日本で生産して輸出するという日本の発展モデルは限界を迎えつつあり、企業が生き残るためには、国内依存のビジネスモデルからの脱却が最大のBCPといえる皮肉な状況になっている。

現に日本企業は新興国の成長市場に事業をシフトするなどグローバル化を加速させている。製造、流通業をはじめとした企業では、70%以上が既に海外展開を進めており、円高によって、日本企業によるM&A(合併・買収)の対外投資はさらに増加すると予想される。

IBMもこれまでパソコンやストレージなどの事業を売却する一方で、ソフト会社を中心に過去数年間で約250社を買収した。事業拡大や新規事業開拓にM&Aは大きく貢献し、円高の今はそのチャンスといえる。

グローバル化は、リスクマネジメントの大きなアクションの一つであるのは間違いない。しかし、外国企業と取引はあっても、経営陣の中や部下に外国人がいるというケースはまだ少ないのが実情だ。まず、日本企業はビジネスの基本プロセスがグローバル化に対応できるように改革していかなければならない。グローバルレベルでの標準化は、グローバルビジネスへの参入や事業拡大の条件になる。

サプライチェーンの視点から調達をみると、日本企業の多くが集中購買型で、これは平時にはベストな手法かもしれないが、今回の震災でリスクを露呈してしまった。複数の企業から同じものを調達して、その先まで管理できているのであればリスク管理が高いということになるが、そのレベルには達していない企業がほとんどのように見受けられる。なぜなら、この構造はコスト増や事務処理の煩雑化の可能性があるからだ。

しかし、それを考慮しながらも、ファーストサプライヤーは1社だがセカンドサプライヤーが複数とか、どの段階でも複数のサプライヤーが存在するというような仕組みの中で、コストを最適化し、調達リスクを最小化するための調達構造を構築する必要がある。

生産拠点を関東と関西に分けたり、海外に設けたりするなど二重化を図る企業は多いが、そのためにはITシステムも二重化し、国内生産でも海外生産でも同じプロセス、同じ品質を実現できる仕組みが必要だ。

プロセス共通化で経営効率向上

IBMのグローバル統合プロジェクトは、グローバル統合型経営モデル戦略の実現、グローバルレベルでのプロセスや機能の簡素化・標準化を進め、利益の適正化を目指している。プロセスの共通化により、どこに移動しても同じプロセス、同じ管理体制、同じ品質でビジネスが展開でき る。各国の法令対応など例外的な要素はあるが、基本的に統一してしまうことで経営効率が向上する。

それを支えるITシステムも本番環境とバックアップに分けるのではなく、本番環境の中に本番環境のコピーを置き、バックアップの中にバックアップのコピーを置く方法を採用している。この4つのシステムがシンクロナイズされて稼働するので、どこかでトラブルがあっても業務が停止することはない。

欧米ではリスクとしてテロも重視され、サイバーテロの対策も進んでいる。このIBMのシステム構成は、サイバーテロを受けても停止しないというIT企業として有効なBCP対策といえる。

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日本大学 通信教育部

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